人体で唯一、もともと赤い場所 — 唇
ボリュームではなく、生気を取り戻す

患者様のお顔を毎日、それもマークビューを映しながら20〜30分ずつじっと見ていると、当たり前でありながら面白い事実を改めて感じることがあります。
私たちの肌の中で、もともと赤い色をしている場所はたった一か所しかない、ということです。唇です。
以前のコラムで私の治療哲学をお話ししました。白紙の点から消していかなければならない、と。色素を消し、凹凸をなくし……そうして14週間かけて肌を白く清らかな白紙にすると、そのときはじめて顔全体の輪郭や生気が見えてきます。
そして、その清らかになった白紙の上で最初に視線を引くのが、唯一赤いこの場所、唇です。私は唇こそ、顔の立体感と生気を最も大きく引き出せる部位だと考えています。そして実際に施術していて、患者様の満足度が高い部位でもあります。
年齢とともに唇のヒアルロン酸がより必要になる理由
20代の患者様は、形を変えたい(口角を上げたい、ボリュームを出したい)というご希望で唇のヒアルロン酸を選ばれることが多いです。しかし30代後半、40代になると、来院される方のお悩みは少し質が変わります。
「先生、最近は口紅を塗らないと、みんなにどこか具合が悪いのかと聞かれるんです」
唇も老けます。コラーゲンが失われて内側に巻き込まれ、厚みが薄くなり、水分保持力が落ちて特有の澄んだ赤みが濁ります。縦じわも刻まれます。唇が薄くなると人中が長く見え、表情自体が少し沈んで、老けた印象になります。
逆説的ですが、年齢を重ねるほど唇のヒアルロン酸の必要性は大きくなります。20代では「もともとあるものをより美しく」する施術ですが、40代以降は「もともとあったのに失われたものを取り戻す」施術になるからです。
ヒアルロン酸の本当の目的 — ボリュームではなく生気の回復
唇のヒアルロン酸というと、多くの方がアヒル口や不自然な唇になるのではと心配されます。私も過剰な施術は好みません。唇のヒアルロン酸の本当の目的は、大きくすることではなく失われた生気を取り戻すことだと考えています。
唇に入れるヒアルロン酸(HA)は、自分の質量よりはるかに多い水分を引き寄せる性質があります。これを唇に薄く繊細に敷くと、単に厚くなるのではなく、水分が満ちることで唇がもともと持っていた澄んだ赤みが戻ってきます。乾いた縦じわも自然にゆるみます。その結果、顔全体に立体感が生まれ、来院されたときとは違う生き生きとした印象になります。
難しい部位だからこそ、より精密に
唇は血管が多く、話したり食べたりで動き続ける部位なので、施術がとても難しいところです。痛みにも敏感な部位です。ですから普段の肌施術で麻酔の時間を十分に取るのと同じように、唇の施術でも痛みを最大限抑えながら、顔全体の比率を考えてごく細かくデザインを詰めていきます。
何より、絶えず動く唇の性質上、異物感なく自然に形を保つことが鍵になります。私が唇専用フィラーであるレスチレン キス(Restylane Kysse)のマスター認定を受けたのもこのためです。無理にボリュームだけを詰めるのではなく、唇の動きに合わせて自然に生気を戻すには、それに適した製品と精密な手技が必ず必要だからです。
ほんの少しでも、微笑みが変わります
14回のパッケージ管理が終わる頃、肌は澄んだのに、ほんの少し生気が足りないと感じることがあります。そのとき、目立つほど入れなくても、唇にわずかな潤いと血色を添えるだけで、微笑んだときの印象が大きく変わります。
外面の変化が内面の自信をつくるという私の考え、覚えていらっしゃいますか。清らかになった顔に、生き生きと輝く赤い唇がひとつ加わることは — 人と関係を築き、人に会ううえで — 思っている以上に大きな自信になります。
適応や効果、持続期間は唇の形・肌の状態・もとのボリュームによって異なり、個人差があります。施術の可否は必ず医師と直接ご相談のうえ決定してください。
この記事に関連する施術



